伝えたい事

これは私が高校2年生の時に体験した事です。

私には小中と仲の良かった‘まみ（仮名）’という友達がいました。
高校に入ってからはお互い忙しく、電話で話すのみになり、そのうち
電話さえしなくなってしましました。

2年生になって秋頃、「まみ、どうしてるかな？」となんだか気に
なって仕方なく、声が聞きたくて電話でもしようと思いましたが、
なかなかできずにいたそんなある日のことです。

小学校時代にまみと同じクラスで、私とは挨拶しかしたことのない位
の付き合いだった‘石田君’から、突然電話がきました。石田君は明るい声で、
「よお！元気だった？」
っと、小学校時代と同じ挨拶をするので、疑いもせず
「うん！久しぶり！！」
というと、卒業してどうしてたとか、ドコそこへ行って何があったとか、
たわいもない話しをしました。
すると急にかしこまって、
「実はさ、今まみと一緒にいるんだよ。こいつがどうしてもっていう
んで、俺が代わりに電話してやってんだ〜」
石田君は酔っているのか、ろれつのまわらない口調でした。
「え？まみ、いるの？？」
「ああ、いるよ！！俺の横に。」
「ちょっと、代わってくれる？」
すると、石田君は急にシ〜ンとなり、電話の向こうから飲み屋
さんのような、活気付いた声や食器のガチャガチャいう音が聞こ
えてきました。
「これからまみ連れて、おまえンち行くからさ。部屋かたずけて
待ってろよ！！30分以内に着くからさ。」
そう言うといきなり電話を切ってしまいました。時計を見ると
10時すぎ。仕方なく大急ぎで部屋をかたずけました。

しかし、いくら待っても2人ともなかなか来ません。12時まで
待ったのですが、明日も授業があったため諦めてその日は寝る事
にしました。

1週間が過ぎた頃、今度はまみから電話が来ました。
「元気だった〜？？」っと昔の明るい‘まみ’で、かれこれ
1時間ほど思い出話をしました。しかし、1週間前のことは
ミジンも話そうとしないので、
「ところでさ、この前、どうして来なかったのよ」と私から
話しを持ち掛けると、
「ええ？何のこと？？」としらばくれるので、1週間前のことを
事細かに話しました。
すると急に黙りこくり、かと思うとゆっくりと、
「あのさ…イシ（石田君の愛称）さ…、1ヶ月前に…死んだ
んだよ…」
というのです！！
「うそ！だって、ちゃんと電話してきたもん。」私は石田君が
話した話をそっくりまみに伝えると、
「それ、どして知ってるの？！私とイシしか知らないはずなのに！！」
そこで初めてまみは石田君から私に電話が来たと信じたようでした。

するとまみは、こんなことを話し始めました。
「小中学校と雪（私）と付き合ってて、ずっと言わなかったけど、私イシと
ずっと付き合ってたんだ。中学の時、交換日記で他の男の子を好きだって
書いたのは、ばれない様にカモフラージュだったの。でも、イシは私と
雪が親友ってこと知ってたから、
‘俺たちの事言わないってのは、良くない’ってずっと言ってたの。
私も‘わかった、そのうち言うから’ってごまかしてて…。
でも、忙しさにかまけて雪の事忘れかけてたら、イシが飲み屋で倒れて
入院したの。酒の飲みすぎだって。それから2度救急車で運ばれて、
二度目にはもうダメだったの…。それが1ヶ月前。だいたい、2人で
電話したんだったら、私だって電話口に出るよ。そういう子でしょ？
私って。」

「え…飲み屋で倒れた？」
電話口に聞こえた「いらっしゃいませ〜！」とか、ガチャガチャ
いうあの音は、やっぱりそうだったんだと思ったとたん、怖いやら、
悲しいやらで、複雑な気持ちでした。

石田君はきっと、まみの代わりに私に2人の事を伝えたかった
んだと思いました。「ずっと付き合ってたんだよ。黙ってて
ごめん！！」って…。