親切

2006年6月3日
これは僕が高校を卒業して間もなくの頃です。

おそらく、まだ夜の11:00頃だったと思います。
知人宅から原チャリでの帰り道、松戸市内の松戸M高校の近くに、両脇が背の高い雑草に挟まれた道幅3m程度の直線道路(300m程)が有り、途中にはお稲荷さんがあります。
やはり、その時間くらいになると恐いのですが、せっかく新しい原チャリを買ったので、スピードを出せるその道を通る事にしました。
問題の道に入り込んで50mくらいしてエンジンがブスっと止まってしまい、セルモーターも回りませんし、キックでもかかりません。
しかたなく押していると、突然後ろから「どうしました」と声がします。
振り替えると作業服を着た中年の男性が立ってました。
なんとなく心細いところで人に遭遇したのでほっとしました。「急に止まっちゃって」と言うと、そのおじさんは、「ちょっと、見てあげましょう」と近寄ってきました。
近くに自動車工場らしきものが有ったので、そこで働いている人かと思いました。
おじさんは、しばらくタイヤの辺りを見ながら、こちらを向き、突然頭を地面に付くくらいにして、「申し訳ない。私の知人が噛み付いたんです」と言い出し、「この道の出口まで私が押していきます。ほんとに済まない」と押し始めました。
タイヤはパンクしてません。
「いいですよ」と言っても「ほんとうに申し訳ない事をしてしまった」と言うばかりで、僕より1m先で黙々を原チャリを押しています。
沈黙が続き、こちらが何を言っても聞きません。ただ謝るばかりで、なんとなく気味も悪く、押し飛ばしてでも原チャリを奪おうかと思いましたが、エンジンがかからないのであれば逃げられません。
益々恐くなり、この年にして泣きそうになってしまいました。
もう少しで出口。ほとんど放心状態です。
やっと街灯らしきものが見え、思い切って「もういいですよ!放して下さい!」と言うと、「知人には良く言っておきます。本当に申し訳ない事をした」とハンドルを渡された瞬間、一気にセルを回したところ一発でかかり、礼も言わずに走り出しました。
追いつかれない所まで走りって振り返ると、誰も居ません。もちろん脇道もないのです。
無事に家に着き、すぐにさっきまで居た知人宅に電話しました。
「変な話は聞いた事ないけど、整備工場はとっくに誰も居ない」との事でした。
そして次の日、原チャリを見てみると完全に後輪の空気が抜けており、目で確認出来るほどの穴が何個所か開いてます。
修理に出すと、タイヤチューブの中から人間の差し歯が出て来ました。

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