寮にて

2006年5月17日
入社してまだ寮に入って間もない頃の話である。

その寮の前にはお寺があり、また隣には公園があった。その公園には、大きな木が一本だけ生えており、私が入社する前の年にそこで首つり自殺があったという話を部屋の先輩から聞いていた。

ある日、昼間に寮の新人が集まり寮祭のための準備をしていた。
私の友人がビデオでその準備風景を撮っていた。

後で撮ったビデオをよく見てみると、奇妙なものが映っていた。それは寮の外で準備する私たちから、公園へ風景が徐々に移っていった時、公園のフェンス越しに遊んでいた子供達の他に、一人の大人がフェンス越しにこちらをじっと見ているのである。
私たちが驚いたのはその顔で、ほぼ同じ位置で遊んでいる子供より、どんなに考えても異様に大きいのである。しかも輪郭がはっきり映っている子供と比較すると、ぼんやりとしている。そして何故か静止画のように、時間が経っても、その顔は無表情のまま変化がなかったのである。

その日の夜、昼間のことが気にはなっていたが、疲れていたこともあって、案外簡単に寝入ることができた。

どれくらい時間が経ったかわからないが、何か耳元で騒がしい音が聞こえてくるのに気がついた。最初は部屋の先輩が音楽を消すのを忘れていると思っていた。が、よくよく聞いてみると音楽ではなくお坊さんが唱えるお経そのものであった。それが私の耳元でけたたましく延々と聞こえていたのである。
目を開けようかどうしようかと思案していた時、下段にいる先輩がトイレにでも行こうとしたのか起きてくれたお陰で、その音がピタリと止んだ。

朝になり、変なものを撮った友人にその話をした。その友人も、私と同様すぐに寝入ったのだが、下段にいる同部屋の人が上段の彼に対し、何度もドンドンと音を鳴らして、その度に彼は目を覚ましたそうだ。眠くてそのままにしておいたそうだが、朝になってその人は出張中で部屋には帰っておらず、その晩部屋に居たのは実は彼一人であることに気がついた、ということである。

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