息の正体

2006年5月10日
まだ実家の団地に住んでいた大学生の頃の話である。
以前から自室で不思議なことがよく起きていた。一番不
思議であったのは、自分の息とは明らかに違う、誰か別の
人の息が定期的に、しかも昼夜関係なく聞こえてくることであった。
団地のすぐ近くを環八が通っており、最初は車の音が犯
人だと思っていた。一度だけ窓を開けその音の犯人を探っ
たことがある。不思議なことにその音の方角は、外でなく
明らかに自室側の天井よりやや下付近の空間から聞こえて
くるのである。「この部屋には、何か怪しいものがいる」と改めて
思ったが、自分には危害を加えないようなので、なるべく気に
しないようにしていた。

ある晩、自室で寝ていると突然足元に何か物が落ち
てきた。驚いて目を醒ますと、私の胸の上辺りに男の人が
立っている。
男は何故か両手で枕を持っており、男もののパジャマを身に
つけていることや足のすね毛まではっきり見て取れた。それ
でも、男が持っている枕が邪魔になり、真下の位置からは肝
心の顔まで見ることができなかった。
手足が動かない金縛りの状態の中、男は突然その枕を真下
にいる私の顔めがけて落としてきた。「危ない!」と思った瞬間に
気を失った。

目がさめると、全身汗びっしょりであった。きっとあれは夢だった
のだろうと思い何気なく足元に目をやった時、そこにはある筈
のない本が1冊落ちていた。

その男が「息」の正体だったのだろうか? 枕を持っていた
のは、「ここは、俺が寝る場所だ」とでも言いたかったのだろうか?
ただそれ以来、怪異な出来事は自室で起きなくなり、あやしい息の
音も聞こえなくなった。

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