貸し別荘

2006年2月25日
7年ほど前の夏に、私が貸別荘で体験したことを紹介します。

富士山麓の樹海の近くにある、貸別荘村でのできごとです。
貸別荘といっても、料金が安いだけあって1DKの文化住宅といった雰囲気です。天井もなく、むき出しの梁と屋根が見えていました。
それでも周囲は樹木が生い茂り、窓を明け放っても隣の棟が気にならない環境は満足のいくものでした。
食事を終え、風呂に浸かると、一日車を運転した疲れもあり、すぐに眠りにつきました。
ところが、夜中の2時を過ぎたころ、なんとなく寝苦しく目が覚めたのです。
台所の流しの方から、水滴が落ちるような音が聞こえてくるのです。

   ポタン……

   ……ポタン……

水道の栓がゆるかったかなと思いながらも、すぐに眠りに戻ろうと決め、しばらくは布団の中でその音を聞いていました。
そのうちに、だんだんと、その音が近づいてくる様な気がするのです。水道じゃなかったのか、雨漏りでもしてるのかなあと思ったのですが、そんなはずがないのです。
もし雨漏りするほどの雨が降っているのなら、屋根にあたる雨音がするはずです。
雨音どころか、うるさいほど鳴いていた虫の声も聞こえてはきません。では、いったいあの音は? 
音はどんどん近づいて来ます。台所とはガラス戸で仕切られた和室のすぐ前まで音が近づいてきたのです。
私は、これはただごとではないと思い、布団にはいったまま、大きくせき払いをしました。すると、その音が止まりました。ああ、これで眠れると安心しかけた途端……ポトン……
。音は20秒から30秒くらいの間隔で近づいてくるのです。その後、もう1度せき払いをすると、1分ほどは音が止んだのですが、再び、近づいてきます。
この状態は普通ではないと思い布団の中でじっとしていると、音は私たちが寝ている和室にまで入ってきました。
台所からまっすぐに布団の横まで、20秒から30秒おきに……ポトン……ポトン……と移動して。
私の布団のすぐ横まで音が来ると、その音は今度は布団のへりに沿って移動しはじめたのです。布団のまわりをぐるりと回るように。
ちょうど頭の上あたりで音がしたとき、たまらなくなり、私は声を上げて跳ね起き、電灯をつけました。しかし、布団のまわりにはもちろん何も落ちてはいないし、水で濡れた跡もありません。同室で寝ていた友人に、寝ぼけた声で、もう朝なのかと訊ねられ時計を見ると、3時ちょっと前、音が聞こえはじめてから30分以上はたっていたはずです。深夜2時頃からあの音は聞こえてきたことになります。
電灯をつけると、もうその音は聞こえてこなくなり、その晩はそのまま眠ることにしました。

翌朝、前夜のことは夢か、幻聴のようなものだったんだと考えることにして、友人にも話さずにいました。もちろん雨の降った形跡もありません。
チェックアウトをするために管理棟で棟番号を告げて鍵を渡したとき、受付の係員に「ああ、○○号ですね、夕べは変わったことはありませんでしたか?」 と訊ねられ、何もないと応えました。
しかし、後で考えると、あのとき係員はなぜ、そんな風な質問をしたのでしょうか? なぜ「夕べ」で「変わったこと」なのでしょう。いままでホテルや、キャンプ場など、チェックアウトのときにそんな聞かれ方をされたことはないように思います。それとも私の考え過ぎで、ごく普通のことだったのでしょうか?
富士山麓にある○郷という貸別荘村での出来事です。

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